ゆっくり運ばれてくる死体を見つめる。死体と言ってもそれはまだ温くてもしかしたらぶん殴れば起き上がるんじゃないかと思うほどやわらかい。突き刺すような視線を向けてやっても苦笑する瞳はないし、ものを喋る口も機能はしていないけど。ばかじゃないの、と結構大きな声で罵ってやれば数人の研究員がこちらを振り向いた。けれど、僕はそんなことを気にしたりなんかしない。ばかめ。ばかめ。何度でも言ってやる。ばかやろう大ばかやろうだこのばか。ばかばかばか。最後の最後までどうしてこんなばかだったんだ。どうして。死にたかったの、どうして?こんな疑問や質問ばかりが頭の中に浮かぶけれど、どうしょうもない、ね。馬鹿。僕はけっして満足したわけではなかったけれど、こちらを向いてすぐ動きを再開した研究員に彼を運ばせたかったわけではなかったしこの現状に納得がいっていたわけでもないから乱暴に彼を奪回して走り出した。さすがにこの重さはきついものがあるし、すぐ追いつかれてしまうだろう、けど。もうどうだっていいんだ。知らないもう何も知らない。どうにでもなってしまえ。自分でも何を言っているのかわからない。ただ僕は、この死体を誰か見知らぬ、このひとの人生について100分の1も知らないような人間にこのひとを運ばせたくなかった、だけなんだ。僕は火葬場へ走る。灰になるなら、僕がこの手で。だから安心してね悲しまないでね、きっと素敵な場所へ送ってあげる。床の上に横たえて、空気が呑み込めなくて死んでしまったこのばかな死体に口付ける。すぅ、と空気を送り込んで何の反応もなく空気が返ってきて泣いてから、首に抱きついた。ぱたぱたと追いかけてくる音が聞こえてからまた抱えなおして走り出して、火をくべる用意をしているひとを突き飛ばして死体を放り込む。薪を乱暴に何本か死体の上に投げると、何もかも燃えてしまえばーか!と罵って火をつけた。

「アレン、くん!!」

背中から泣きながらリナリーが抱きついてくるのと、ばかやろうって怒鳴って目元を覆ってくる神田の腕の感触を認識してひっく、と嗚咽を漏らした。もう二度と会えないさよならもう一度会いたいけど、

(さよならばかやろう)







necroforo
    
(死 体 運 搬 人)




thanks:SBY