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髪の短い彼の頭は幾分か小ぶりになっていて、その首に手をかければいともたやすく折ることができそうで、手足だって、力いっぱい蹴ったらぱきんと曲がってしまいそう。それが文字通り女になったからだと気づいて、なぜか途方もなく、途方もなく……不思議な気持ちに、なって。
「大丈夫、ですか」
「……まあ、そうだな。生きてるんだから、良いだろう」
「はあ……」
答えらしいような、答えらしくないような、彼にしては奇妙な言葉。やはり大丈夫ではないのではと思いながら近寄れば、雨と鉄の匂いがした。
雨は、降っている。昨日の朝から止むことなく、強すぎず弱すぎずの勢いで、今もさあさあと。それに混じって鉄の匂いがするのは、どうしてだろう。わずかながら視線を下ろせば、彼は僕に見られるのを嫌がるように視線をそらした。
「原因は……」
「ハルヒ以外にいるのなら、そりゃなんとかしないといけないな」
何かを諦めたような口調に、僕は何も言えなくなって、長門さんへと視線をそらす。彼女は相変わらず窓際でごつごつとした装丁の本を読んでいたけれど、僕の視線に応えるように顔を上げてくれた。朝比奈さんと涼宮さんの姿は、ない。
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