「ねぇ、ほんとに愛してる?」
ショッキングピンクのグロスに、ピーチピンクのチーク。耐水性のあるマスカラと、けばけばしさの三拍子が揃いに揃ったその女は短い手を伸ばして俺の首に触った。ちゃんちゃん。その時点でおまえ終わりだよ。俺はさ、スンゴク鼻にツンとくる香水の匂いとか嫌いなの。気持ち悪いの。ぶっちゃけころしたいとかおもうわけ。振り向きざまに首筋から香る石鹸の匂いとかが大好物なわけ。よってお前には死んでほしいと思うわけです合掌!
「うん。愛してるよ。なに、俺の愛疑っちゃったりとかしたわけ?」
「ううん、そんなことない」
俺の口は嘘八百出任せ一休さんもびっくりの話術が飛び出す仕組みになってるので、そりゃあもう目の前の汚ぇ女もメロメロなんだよな。あー俺って罪な男。そんでこいつも罪な女。俺がイノセンス取り出さないから安心してベタベタしちゃってさ。殺気向けたら涙糞尿垂れ流してひいひいあえぐくせに。汚ぇなぁ汚ぇ。なぁ俺の好み知ってる?お前じゃないの。その、中途半端に色素が薄くて長くて枝毛切れ毛ばっちりで、ひっぱったらキシキシ音が鳴りそうな髪の毛じゃなくて、ショートヘアで白い髪の毛大好物。そんで化粧っ気とか一切無くて、自然に綺麗で長い睫毛がいいの。ぼってり膨れた唇にも触りたいとか思わねーもん汚ぇーもん。お前さ、ちょっとは化粧流して俺のトコに来ようとか思えねえの。
「ほら、こっち来いよ。寒いしさー」
「あん、ちょっと待ってよ」
誰も脱げとか言ってねぇのに服脱ぎ始める女とかワケわかんない。
寒いんなら人肌でってか?ウワ、引く。その発想マジきもい。俺の腕に飛び込んでくるホルスタインみたいにでかい胸もさ、重たいんだよねぶっちゃけ。だから切り離したいとか思うんだよ。なぁ俺の理想知ってる?貧相でも形のいい、触ったらみずみずしい胸なんだよ。お前みたいに手術して無理におっきくしたのとか駄目なの。受けつけねーの。よって大却下!どっか行けよ。
「そーそ、あーやわらけ」
「もお、ラビってばぁ」
そのさ、鼻につく声やめてくんねーかな。
どうせ俺がいないとこでは汚ぇ女どもとべちゃくちゃ低い声でありもしねーこと言ってんだろ?女って愚痴言うときとか声低いしさ。俺はさ、それを知っちゃってるワケ。だからお前の取り繕った声とか、マジ勘弁なわけ。もう泣きたいくらい鳥肌とか立ってるんだけどお前が気づかないから辛うじて我慢してるだけ。俺さ、いつでもどこでも変わらない声音が大好きなんだよ。誰彼構わず、俺のところにとまったかと思えばどっかいっちゃうような、それでもそんな不安定な奴でも、そいつのほうが全然いいんだよ。
「ねぇ、抱いて」
「ん、いーよ」
俺は女を押し倒す。
きもちわりー胸に手を置いて、ちょこっとイイトコ触ったら女ってすぐあえぐんだよな。別にそれが本物かなんてわからないけど。実は演技かもしんないけど。俺がテクニシャンなのか女が女優なのか。別に女は演技したっていいことなんて一つもねーから多分自然なんだろーけど。そう考えると俺にはまた嫌悪感が生まれるわけです以上!
あーあ俺何してんだろ、俺ほんとどうしたんだろ。俺の大好きなあいつは今頃違う男のとこで幸せそうに笑ってる。俺はあいつを手にしたいのにあいつはもう俺のところにやってこない。だから俺はいらない愛でも受け取るんだよオーケー?俺はさ、寂しいんだよ。あいつが一番なワケ。だから傍にいてほしいワケ。あいつじゃなくても好きになれるさってこんな正反対のタイプの女引っ張っては日夜アレコレしてるわけだけど一向に気持ちよくなんないわけ。もう泣きそう。女抱いて女が帰ってから洗面所で思い切り胃の中身吐き出すわけ。ああアレン、アレン、もう俺終わりかも。お前以外いらないのかも。お前が一緒になってくれないと死んじゃうかも。なんていいながら言い寄ったら、もしかしたらこっち来てくれるかな?もう、仕方ないですねラビ、って言って俺の頭撫でてくれる?もう俺泣きそう。お前以外いらないのに。なんでお前はあいつのとこにいっちゃったの?ねぇ戻ってきてよ。俺の愛が廃れていく。お前にあげたい愛情だけが膨らんでもう爆発しそうなんだよ。お前を抱きたい。お前を抱いて、そんで精一杯気持ちよくなったら俺は泣けると思うんだ。
俺の下で女があえぐ。気持ち悪い顔で気持ち良いなんていってる女を逝かせてやりたい。ねぇお願いだからこっち来てよ、アレン。
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