まるでちいさな子供のように、丸まって眠った。
俺はこの腕の中にアレンさえいればよかったわけで、アレンがいれば俺は大人っぽさもしがらみも疲れも明日への絶望も何もかも捨てて穏やかに眠れることができた。
アレンは俺の抱き枕なんかじゃない。それは知ってるし、アレンを利用しようなんてちっとも思ってない。アレンがいなければ諦めて苦しい悪夢を見るし、アレンが俺と一緒に眠る事を拒めばやっぱり俺は諦めて苦しい悪夢を見るだけ。
もしアレンに色があれば灰色か白だと思った。真白だと思っていたけどそうでもないものだ。アレンはしっかり世の中の不浄を受け止めて成長していた。だからこそ、真白でありながら灰色、それも黒に近いもの、なのだ。アレンのその色は、俺をも侵食する。侵食されたいと思った。アレン、お前が俺の精神安定剤なんだよ。奇妙な話だよな。
眠れない夜はお前の体温がほしい。小さい子供みたいにまるまって自分の体から自分の体へ熱を分けようとしても、まるで氷を抱えてるみたいに冷たいんだ。なあアレン、お前にもそうであってほしい、そう思う俺は卑怯かな?
「ラビ、眠れないの?」そう言って俺の頭を抱きしめて、しっかり俺の肩まで毛布をかけて、俺の耳にわざと心臓を当てるようにするアレンは結構卑怯だ。お前は女の子で、お前は胸を俺に押し当ててるってことなんだよ?そうやって俺の理性試そうとして、…天然だから怒ることもできないで。
いつか子供が出来たら、平和な世界で一緒に暮らすことができたら、そしたら家を建ててそこに住もう、と言った。叶わない夢物語だと思った。生々しいからだのつながりは持って居ても、俺達の間にその結晶は生まれてこない。生まれても、今の時代では生き延びる事はできないだろうから。
俺たちが十分、両手を広げて世界を暮らせるようになったら、そしたら、子供作ろうな、って言ったら、アレンは怒って、照れて、それでも笑った。ああもし俺が死にそうになったら、お前は泣いてくれるかな?
アレンの手が俺の頭を撫でる度、言いようの無い思いが俺の胸の内でざわついて、ひたすらひたすら寂しいと泣き喚く。俺にはもうお前がいないと生きていけないっていうペナルティがついたんだよ。
「なんだ、ラビ…、まだ、眠れない、の」アレンが呟いて俺の額にキスを落とした。柔らかいお菓子みたいな感触がしてすぐ離れて、また穏やかな寝息が耳に届いてから、俺は少しずつ涙を流す。泣いたら、泣いたらアレンはおきてくれるかな?起きて、だいじょうぶ?って言って、それから抱きしめてくれるかな。なあアレン、どうしてお前はそんなにもきれいなの。おれもきれいにしてくれよ。お前の灰色はそんなにきれいになれるの?じゃあ俺にも色をうつしてよ。
アレンと同じになったら、そしたら俺は、もっと気丈に笑えるんだろう、か。
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