その、白い髪の毛やさらさらした手触りやきれいな瞳や、そういうものが原因ではないとはわかっている。ただ、生き方や口の物言い、問いかけや思考があまりにも突飛で自由でやわらかかったからそう思ったのかもしれない。
まず、彼はよく笑う。きゃらきゃら飽きない笑顔である。時折悲しそうに頬を歪めるそのさまは悲しくて嫌いだけど、笑顔はどの種類でも好きである。例えば、馬鹿ウサギに対して断罪を含めて浮かべる似非の笑顔だとか。それを怖いと思うし可愛いとも思う。私は末期だと思う。そして末期でいいと思う。愛しいものはしょうがない。今日も彼を愛でる。てくてくと近寄り、とらえどころの無い彼の一部分に触れ、掌の温度を確かめ、生きていることを確認する。勿論人間としての基本、挨拶をすませたあとで。どうかしたんですか、と問いかける無垢な瞳に黒くよどんだ瞳を返して、こちらも負けぬようにと笑顔を浮かべる。気づかれないように気づかれないように悟られないように。ああそういえば、と彼は言う。窓の外で大量の鳥が羽ばたいていて、一部の鳥がひょろひょろと力無くよろめきながら飛んでいた。それを指差して彼は言う。あの鳥見て、どう思いますか、と。私はその鳥を見て、可哀想だと一番に思った。あのままではいずれ仲間から見放されてしまうのだろう。それを一語一句違えず伝えると、彼はふぅん、そんな考え方もあるんですね、と言って微笑んだ。いい人ですね、と。じゃあそんなあなたはどんなことを考えたのと問いかけてみれば、彼は純真無垢な笑顔でこう言ったのだ。

「いずれあのままだったら死ねるでしょう。そしたら、きっと楽になれるから、いいな、って」








鳥のような人だと想う








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