愛うらら

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S side







授業を聞き流しながら、セナは適当にノートを取っていた。
窓際のこの席からは、外が良く見える。冬なのに今日は特別晴れていて、紫外線と日の光がちくちくとセナの腕を攻撃した。
正直、授業はつまらない。その理由としては、楽しくない・意味がわからない・ついていけない――上げていけばきりがない。こうして半分呆けた状態で物事を考えると、必ず思い浮かぶのは小学校時代。とはいっても、そのときの授業の内容が簡単だったとか、いじめられるようになったことだとかそういうのを思い浮かべるわけではない。

(陸)

名は体を表す、というのはよく言ったものかもしれない。彼は確かに、陸上を駆け抜ける存在だった。速すぎてセナには追いつけもしない。彼のことを思い出し、考えては、ひたすら会いたいと願うのだ。
アメフトの選手としてライバルになったときは、正直、泣きそうだった。誰が好き好んで信頼している相手と敵対するものか?けれど、陸もセナもそれをお互い甘受したのだから、文句などは言ってはいけないのだろうけど。
さびしがっているのは僕だけなのだろうか?そう考えて、セナはしゅんと項垂れる。
陸はこの対峙を楽しんでいるようにも見えた。彼がアメフトを好きで好きで、そして絶好のライバルを見つけたのだから楽しいのは当然なのだが、寧ろその方がずっといいのだが、それでも悲しいものは悲しい。自分ばかり、と考えては切なく息を吐く。
嫌われてるのかなぁ、とセナは思う。それは全くのお門違いなのだが。陸はセナが大事で、嫌いだなどと考えたことは一瞬でもない。西部にセナを引き込んで傍にいさせたいと思うほどに。
ネガティブに考えすぎて混乱してきたセナは、考えることを放棄した。ふうと息を吐いて授業に集中する。これ以上おいていかれたら進級がやばい。
その様子を横で見ていた十文字は眉を寄せた。さっきから、何事か悩んでいたように見えたが急に吹っ切れたように授業に集中している。思わず「コイワズライ」か?とでも聞きそうになってしまって焦った。人一倍色恋ごとに疎そうなセナに限ってそりゃねえな、とも考える。
あんなに呆けて授業もまともに聞かないで、授業においてかれても知らねぇぞと心の中で十文字は忠告した。
その日がセナの誕生日であるということを、セナ自身は知らない。数分後震える携帯に胸を躍らせ、今日何かあるのかな、と思うほど、鈍感だった。