この明け方にもようやく慣れたところで、先ず枕元に斬魂刀が存在を主張していることに安堵した。
それからそれを手に取り、声を聞く。確かに自分の名を呼んだことに満足し、そっと枕元へ戻した。そういえば今日はいつになく冷え込んでいる。寒さにぶるりと体を震わせると立ち上がり、せめてもの寒さしのぎと着物を寝巻きの上から羽織る。
手先が冷えて感覚を失っていた。僅かな痛みすら伴う。眉を寄せて息を吹きかけるが、たいした効果は無かった。喉の奥がぱりぱりと凍って砕けていくようで、息をすることすら苦しい。
まだ時刻は早い。薄ら照っている程度の外を見た後、また寝床に戻った。着物を丁寧に畳み枕元へ斬魂刀と共に置き、もぞもぞと布団を被る。
顔を覆ってしまうほど布団にもぐりこみ、数を数えた。いち、にい、さん、し。単なる暇つぶしだ。
寒い朝はこうして、温度を保つようにしている。どうせ着替えるときにまた温度は下がるのだが、気分の問題だ。夏に弱い冬獅朗だが、冬はまた違った意味で弱かった。
自らの斬魂刀が氷雪系であることを理解しているが、それはまた関係の無い話。寒さは、感覚を奪う。あまり好ましいものではなかった。
するりと、露出した髪の毛を風が撫でていく。隙間風でさえこんな風に室内を冷ましていくのだ。だったらせめて、体中を暖める必要があると言う冬獅朗を誰が責めるだろうか。
それから、拳を握り締めてできた皺の数センチ上を片方の手でなぞる。そっと。そしてなんの温度も無いことを確認してからああ、と目を閉じた。ひゅうひゅうと隙間風は相変わらず、

冷たい。

(…慣れてなんていねえじゃねぇか)

今でもこうして、温度を探している。隣に、傍らにあるはずの温度を探している。
再び戻ることはもう無いと知りながら。知っていながら、また皺をそっとなぞった。












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