伝達:
某日、護廷八番隊より負傷者が総勢49名発祥。内27名は今後における活動に支障あり。
即刻、49名負傷の原因を追究。結果報告をせよ。






「…なんですかこれ」

「見ての通りだ」

たった3行しか書かれていない通達は内容の少なさに反比例して重い内容だった。
ここ最近は平和だったのにぃ、と唇を尖らせる乱菊を窘めながら、冬獅朗は椅子に座る。それから机の上にいつもどおり書類を広げ、筆を手にした。
争いごとも苦手ではないが、書類整備の方が楽だ。適当に数枚整えて目を通す。それから思い出したように「松本、お前はこれやっとけ」簡単な書類を翳してそう言った。
心の中で乱菊はあ、と呟く。こういうときは、彼が急いでいる、或いは焦っているとき。恐らくは前者だろう。
仕事嫌いな乱菊には簡単な書類を渡し、自分は難しい書類を引き受ける。そのほうがいかに能率的に終わらせることができるか、彼は十分わかっていた。
定時には終わらせて、伝達された業務をこなすつもりなのだ。一人で。

はぁと短いため息をつき、乱菊は書類に手をかけた。一瞬目を閉じ、開く。集中すればこんな書類、数分で終わる。こうなったら私も難しい書類やってやろうじゃないの、と再び心の中で呟いた。









ぐちゃぐちゃに潰れた臓器を踏み潰し、『それ』は残念そうに項垂れた。

「……シッ、パ、イ、ダッタ…」

拡声器を通じて喋るかのような、空気を震わせる音程。憎しみも篭るほどに低くうなり、潰れた臓器をさらに潰した。
ふと、臓器とは違った感触に作業を止める。足の裏にこびりついた血液と、小さな人形のような何か。
大きな指を伸ばし、それをつまんだ。掌に静かに置くと、ひときわ大きく泣き叫ぶ。

「ワタ、シノ………、コド、モ、………」

わが身張り裂けよといわんばかりに泣いた。もとは命であったそれは、人間とは程遠く、顔も識別できないものだった。

潰れた臓器、もとい子宮と胎盤を恨めしげに睨みつけ、叫ぶ。

「ダメダアアアァァァアァァ…………」



潰れた子宮の横には、死神の女の顔。恐怖に彩られた彼女の千切れた四肢にへばり付く、八番隊の腕章。横には、綺麗に折れた斬魂刀が置かれていた。